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血糖値を抑える主食はどれ?おすすめの種類と食べ方を管理栄養士が解説

お米やパン、麺をどのように食べたらよいか悩む方も多いのではないでしょうか?血糖値の上昇を抑えるためには、食事が大事です。特に主食は、量や摂り方によっては食後高血糖につながってしまいます。もう主食選びに迷わないよう、管理栄養士が食後高血糖を抑えるための主食の選び方や摂り方を解説します。

目次


糖尿病と食事の関係


糖尿病や重症化をおさえるためには、日々の食事が鍵を握ります。血糖値の変動を起こす一番の要因が食事だからです。特にお米やパン、麺などの主食には糖質が多く含まれているため、これらをいかに適切に食べていくかが大切です。


しかし、多くの方が何をどれくらい食べてよいのか悩んでいます。血糖値を上げにくい主食や、摂り方などを管理栄養士が解説します。

糖尿病の食事の基本


まずは糖尿病発症や重症化対策にはどのような点に気を付ければよいのか。食事の基本について解説します。

糖質の摂り過ぎに気をつける

血糖値を一番上げるのは糖質です。糖質はお菓子やジュースのほか、お米やパン、麺に多く含まれています。そのため、摂り過ぎによって血糖値の急上昇が起きます。


しかし、摂らなさ過ぎも実は問題です。体や脳を動かすエネルギー不足につながり、疲労やイライラを感じたり、筋肉の分解が起きて血糖値や体重のコントロールの悪化につながったりするおそれがあるためです。毎食摂るものだからこそ、「適量」を意識したいですね。

GI値の低いものを取り入れる

GI値(グリセミック・インデックス)をご存知ですか?食品の糖質の吸収度合いの指標のことで、最高値を100とし、値が低いほど血糖値が上がりにくいとされています。主食でも玄米と白米ではGI値が異なります。GI値が低いものを積極的に摂ることも血糖値のよいコントロールにつながるでしょう。

バランスを意識する

前述にあるように主食を適量、低GI食品にしても食事のバランスが崩れていたら血糖値は上がりやすいです。例えばおにぎりだけ、パンだけの食事は血糖値の急上昇が起きやすいでしょう。主食だけでは糖質を代謝するビタミンやミネラルが足りないからです。


さらに、血糖値の上昇を緩やかにするとされる食物繊維も不足します。このように血糖値のコントロールには主食の質や量だけでなく、ほかの食材との組み合わせも大事なのです。

お米の選び方と食べ方のコツ


血糖値のコントロールのための食事の基本がわかりましたね。しかし、お米は本当に摂ってもよいのか、血糖値を逆に上げないのかなど、悩む方も多いでしょう。そこで、お米を摂っても食後高血糖を抑える方法を解説します。

米は血糖値をあげる?

お米は血糖値を上げやすいイメージがありますよね。実は、お菓子よりも血糖値は上がりにくい種類です。さらに腹持ちもよいので、余剰な間食をとって血糖値を乱すのも抑えてくれます。お米が血糖値を上げやすいとされるのは、摂り過ぎや食事バランスの乱れ、食べ方などの影響が大きいのです。

おすすめの種類

お米のなかでも白米は、血糖値が上がりやすそうで避ける方も多いでしょう。確かにGI値は70以上で、高GI食品に位置づけられています。しかし、食べる量や食べ方に気を付ければ、血糖値の急上昇を抑えることはできますよ。より血糖値を抑えたい場合は、以下の種類がおすすめです。


・玄米
・もち麦
・雑穀米


これらは精製度が低い穀類で、低~中GI食品に位置付けられています。血糖値の上昇を抑える食物繊維や、糖質の代謝に関わるビタミンB群やマグネシウムなどの栄養素が白米より多いためです。しかし、摂り過ぎると消化不良を起こす場合もあるため、単品ではなく白米と混ぜて使うのがおすすめです。

血糖値を上げない食べ方

GI値が低い種類を取り入れるほかに、量や食べ方も非常に大切です。個人差はありますが、1食あたり茶碗1杯(160~200g)を目安に摂ってみましょう。また、いきなりお米から食べるのではなく、たんぱく質や野菜から食べることや、よく噛んで食べることを意識してみてください。これらの食べ方で、血糖値の急上昇を抑えることもわかっています。


このように、お米を摂っても量や食べ方をおさえれば、よい血糖値のコントロールが期待できますよ。

パンや麺の選び方と食べ方のコツ


お米は、量や食べ方を意識すれば血糖値のコントロールができることがわかりました。しかし、同じ主食の仲間であるパンや麺はどうでしょうか?パンと麺の特徴とおすすめの種類を紹介します。

パンや麺は糖尿病に良くない?

パンや麺も、お米同様に血糖値を上げやすいイメージがあるでしょう。実際、食パンといった白いパンのGI値は高めですが、麺類は意外と中~低GIの種類が多いです。しかし、パンや麺は柔らかく、たくさん噛む必要がないので胃にすぐに流れ込み、食後高血糖が起きやすいとされています。
さらに腹持ちもよくないため空腹感を感じやすく、その後の間食が増えてしまうおそれも。そのため、食べ方やバランスをしっかり意識したいですね。

おすすめの種類

パンや麺が食べたいが、血糖値が気になる場合は以下の種類を意識的に取り入れてみてください。


・食パン
・ロールパン
・全粒粉のパン
・そば
・パスタ


表1 各主食の一人前あたりの栄養価

種類一人前エネルギー(kcal)たんぱく質(g)脂質(g)炭水化物(g)食塩相当量(g)
食パン6枚切り1枚(60g)1495.32.527.80.7
ロールパン2個(60g)1856.15.429.20.7
そば(ゆで)1束(260g)29412.51.857.50.3
うどん(ゆで)1玉(230g)2186.00.949.70.7
中華麺(ゆで)1玉(230g)30611.31.467.20.5
パスタ(乾)1束(210g)31512.21.967.62.5

表2 GI値一覧表[愛佐2]

GI値
食パン95
うどん(ゆで)62
そば(ゆで)55
中華麺(生)65
パスタ(乾)48

※あくまで目安値です。実際の商品により値は異なります


菓子パン類は砂糖を多く使用していることから、血糖値の急上昇を引き起こしやすいです。食事として使うのは避け、シンプルな味付けのパンを選ぶようにしましょう。


さらに、ふすま粉やライ麦などの全粒粉穀類を含んだものであれば、より血糖値の上昇が抑えられますよ。また、そばやパスタは低GI食品に該当するため、麺類であればこの2種類がおすすめです。しかし、低GIだからといってパスタやそばばかり食べると、エネルギーの摂り過ぎにつながるおそれもあるため、取り入れる量や頻度には注意してくださいね。

パンや麺を食べる時の注意点

お米同様に、パンや麺はたんぱく質や食物繊維が不足しやすいです。たまごやサラダチキンを足したり、野菜をサラダやスープなどでしっかり取り入れてみたりしてください。またよく噛まずに食べられてしまう形態のため、意識的に噛むようにしましょう。


さらに、パンや麺には食塩が含まれています。血糖値のほかに血圧も気になる方は毎日食べるのは避けた方が安心です。

主食はどれが良いのか?

血糖値の良好なコントロールのためには、基本はお米を中心に食べるとよいでしょう。お米は噛み応えもあり腹持ちも良いため、間食防止にもつながります。また魚や納豆、豆腐などの糖尿病対策に役立つ食材との相性がよいのもおすすめの理由のひとつです。


さらに、お米の食塩相当量は0gのため、余分な塩分を摂らすに済みます。以上のことから、お米を中心にし、時折パンや麺料理を取り入れてみてくださいね。

お米を食べて良好な血糖コントロールを目指そう

血糖値の良好なコントロールを目指すにあたって、食事は欠かせません。特に米やパン、麺などの主食は糖質が多く含まれているため、血糖値に大きく関わります。しかし、それと同時に体と脳にも大事な栄養素でもあるため、適量を摂ることが重要です。そのほか、低GI食品を選んだり、たんぱく質や食物繊維などのバランスを整えたりすることも意識しましょう。


そんな主食ですが、基本はお米がおすすめです。低GI食品である玄米や五穀米などを活用するのも良いですね。パンや麺は時折取り入れる程度にしてくださいね。様々な食材と相性がよいお米を活用して、良い血糖値のコントロールを目指しましょう。

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参考文献

日本人の食事摂取基準(2025年版)|厚生労働省
糖尿病食について|東大阪市
日本食品標準成分表2020年版(八訂)|文部科学省

この記事を書いた人

佐久間愛子
管理栄養士
管理栄養士として介護・医療業界を経験。病院経験を経て予防医療の大切さに気づき、現在は特定保健指導や糖尿病の重症化予防に取り組む。今までの経験を活かし、栄養・健康分野のライターとしても活動中。

監修者紹介

木村眞樹子医師
東京女子医科大学医学部卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。 妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。 医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

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    妊娠糖尿病とはどんな病気か? 妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病には至らない糖代謝異常のことを指します(注1)。主な原因は、胎盤ホルモンによるインスリン抵抗性の増加です(注2)。妊娠中はホルモンバランスの変化により、血糖値が上がりやすくなります。 <症状と診断> 妊娠糖尿病は自覚症状が少ないため、発見が遅れることがあります。これを防ぐため、妊娠24~28週にスクリーニング検査として50gブドウ糖負荷試験(GCT)が実施されます。GCTでは、50gのブドウ糖を含む溶液を飲み、1時間後に血糖値を計測します。もしGCTが陽性となった場合、診断検査として75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)が行われ、次の診断基準に基づいて妊娠糖尿病が診断されます(注2) 診断基準: 以下のいずれか1項目以上を満たす場合に、妊娠糖尿病と診断されます(注1)。 ① 空腹時血糖値 ≧ 92mg/dL ② 1時間値 ≧ 180mg/dL ③ 2時間値 ≧ 153mg/dL <既に糖尿病の方への注意点> 妊娠前から糖尿病を管理することで、母体と胎児の健康リスクを軽減できます。糖尿病の既往がある方は、妊娠前から血糖コントロールを意識し、医師と相談しながら計画的に妊活を進めることが重要です。 2. 妊娠糖尿病が母体や胎児に与える影響 妊娠糖尿病は、母体だけでなく胎児にもさまざまな影響を与える可能性があります。 ● 母体への影響 ・妊娠高血圧症候群のリスクの増加 ・帝王切開が必要になる可能性 ・羊水過多症の増加 ● 胎児への影響 ・巨大児(出生体重4,000g以上)のリスク ・早産のリスク ・新生児低血糖 3. 妊娠中の管理の重要性 妊娠糖尿病の管理には、医師や管理栄養士と連携しながら生活習慣を見直すことが大切です。 3-1 血糖コントロールの重要性 赤ちゃんの健やかな発育のために必要な栄養を摂取しながら、母体の健康を維持することが重要です。血糖コントロールや過度な体重増加を防ぐことで、血糖値の安定につながります。 3-2 血糖値の測定・記録と運動 定期的に血糖値を測定し、食事や運動が血糖値に与える影響を確認しましょう。また、医師の指導のもとで適度な運動(ウォーキングやストレッチなど)を行うことが推奨されます。ただし、妊娠中の体調や状況によっては、運動を控えたほうがよい場合もあります。運動を行う際は、医師に相談し、適切な方法で無理のない範囲で実施しましょう。 4. 妊娠糖尿病の食事で注意するポイント 基本的には、指示エネルギー量を守りながらバランスの良い食事を心がけることが重要です。高血糖になりやすい方は分食を取り入れることも有効です。 4-1 指示エネルギー量 母体に肥満がない場合、おおよそのカロリーの目安は以下のように計算します。 ・妊娠初期(~13週):標準体重×30kcal+50kcal ・妊娠中期(14~27週):標準体重×30kcal+250kcal ・妊娠後期(28週~):標準体重×30kcal+450kcal ※肥満(BMI 25以上)がある方は、母子の健康状態に応じて適切なエネルギー摂取量を決定します。 4-2 バランスの取れた献立 主食・主菜・副菜を揃え、1日の総エネルギー量を3回に分けて食べるようにしましょう。 4-3 食物繊維が豊富な食材を意識して摂る 食物繊維が豊富な食材を積極的に活用することで、血糖値の急上昇を抑えることができます。 食材例:野菜、豆類、きのこ類、海藻類、全粒穀物など 4-4 食べる順番 副菜、主菜、主食の順に食べましょう。特に、食物繊維が豊富な副菜を最初に食べることが推奨されます。 4-5 よく噛んで食べる 食事はしっかりと噛んで食べることで、血糖値の急激な上昇を抑えることができます。また、消化も良くなり、満腹感が得られやすくなります。 4-6 間食の工夫 甘いものを控えめにし、必要に応じて少量の間食を取り入れましょう。間食は身体に必要な栄養素を補うものが望ましいです。 間食例)おにぎり、焼き芋、シリアル・牛乳、焼きうどん、サンドイッチ、フルーツヨーグルト和えなど <血糖値が高い場合の食事回数の工夫> 食事を規則正しく1日3回摂っても、食後に血糖値が高くなる場合は、食事回数を6回に分けて摂る「分割食」を取り入れることが有効です。1回の食事量を減らし、少量ずつ頻繁に食べることで、食後の血糖値の急激な上昇を抑えることができます。 また、食事療法で血糖値が改善しない、または症状が悪化している場合は、インスリンの投与が必要となる場合もあります。 5. 妊娠糖尿病サポートレシピ ここで、妊娠糖尿病をサポートするために、食物繊維が含まれている食材を使用したレシピをご紹介します。シンプルで手軽に作れるスープや和え物は、作りやすく、食欲がないときでも、日々の食事に取り入れやすい内容です。 5-1 レシピ名:「豆苗と卵のスープ」 豆苗と卵を使ったシンプルなスープです。豆苗は食物繊維を含み、卵は良質なタンパク源です(注3)。あっさりとした味わいで、食欲がない時にもおすすめです。 <作り方> ①豆苗を洗い、根元を切り落とし、食べやすい長さにカットします。 ②卵を溶きほぐし、塩少々で味を調えます。 ③鍋に水を入れ、中華だしと豆苗を加えて煮ます。 ④豆苗が柔らかくなったら、沸騰させ溶き卵を回し入れたら火を止めます。 ⑤最後に塩・コショウで味を整えて完成です。 5-2 レシピ名:「めかぶとミニトマトの和え物」 海藻のめかぶとミニトマトを組み合わせたさっぱりとした和え物です。めかぶは食物繊維を含み、ミニトマトには妊娠時に普段より多めに摂取することが推奨されているビタミンCが含まれています(注3)。 <作り方> ①めかぶをさっと水洗いし、食べやすい長さに切ります。 ②ミニトマトは半分に切ります。 ③めかぶとミニトマトをボウルに入れ、めんつゆとお酢で和えます。 ④お好みでごまを振りかけて完成です。 ※中華だしやめんつゆの使用量によっては塩分が多くなることがあります。塩分の摂りすぎには注意しましょう。 6. 出産後の検査とケア 出産後、妊娠糖尿病が一時的に正常化することが多いですが、妊娠糖尿病を経験した女性は、将来、糖尿病を発症するリスクが高いことが知られています(注4)。血糖値が正常に戻ると定期的な検査を受ける機会が減りますが、妊娠糖尿病の経験者は糖尿病に移行しやすいため、産後も定期的なフォローアップが必要です。 6-1 産後検査の必要性 出産後6~12週に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受け、血糖値の回復状況を確認しましょう。 6-2 継続的な体調管理 妊娠糖尿病を経験した女性は、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高いため、定期的な内科受診や食事・運動療法を継続することが推奨されます。 7. まとめ 妊娠糖尿病は適切な管理を行うことで、母体と胎児の健康を守ることができます。医師や管理栄養士と相談しながら、安心して妊娠期間を過ごしましょう。

  • 糖尿病でも楽しめる!誕生日のお祝いメニューのアイデア

    血糖値を上げにくくする食事のコツ 糖尿病の食事療法には、血糖コントロールが欠かせません。まずは、血糖値を上げにくくする食事のコツからおさらいしましょう。 1.食材選びのコツ 食材選びのコツは、食物繊維が多い物を選ぶこと。食物繊維は血糖値の上昇を穏やかにする働きがあるため、積極的に摂取しましょう。(※1) <食物繊維の多い食材の例> ●穀物 玄米、ライ麦パン、全粒粉パンなど ●野菜 野菜類全般、きのこ類 ●海藻類 海藻類全般 ●豆類 大豆、納豆、小豆など また、GI値の低い食材を選ぶのもおすすめです。GI値(グリセミック指数)とは、食品の摂取後の血糖値の上がりやすさを数値化したもの。数値が高いほど血糖値が上がりやすくなります。食物繊維の多い物、精製されていない茶色いもの(玄米、そばなど)はGI値が低い傾向にあります。 ●穀物 玄米、そば、全粒粉パンなど ●野菜 葉物野菜、きのこ類 ●豆類 大豆、納豆、小豆など ●果物類 りんご、いちご、みかんなど ●肉類・魚介類 肉類・魚介類全般 2.調理のコツ 糖尿病食は、1人ひとりの体重、性別、年齢、生活習慣などに応じて摂取カロリーを定めています。揚げ物などの脂っこい料理を中心にしてしまうと、あっという間に1食の摂取カロリーに到達してしまうため、なるべく脂質を抑えた調理法がおすすめです。 具体的には、オーブンや魚焼きグリルで焼く、蒸し器で蒸す、電子レンジで調理するといった方法があります。 ただし、悪者扱いされがちな脂質も、上手に利用すれば食事の満足度を高められます。脂質は吸収が遅いという特徴があるため、満腹感を持続しやすいのです。さらに糖質もゆっくり吸収されるため、急激な血糖値の低下を防ぎ、空腹感を抑えやすくなります。 脂質を極限まで抑えた食事ではなく、サラダに少量のアマニ油やオリーブオイルをかけたり、蒸し野菜のつけダレにえごま油を加えたりして、適量の脂質を摂るとよいでしょう。 3.食べ方のコツ 食べ方にもおすすめの順番があります。 ①野菜など食物繊維の多い物 ➁肉や魚などたんぱく質が多い物 ③ごはんやパンなど炭水化物の多いもの この順番に食べると、血糖値の急上昇を防げるため、普段から意識してみましょう。 また、セカンドミール効果にも注目です。セカンドミール効果とは、最初に摂った食事が、次にとる食事(セカンドミール)の後の血糖値にも影響を及ぼす現象のこと。(※2)例えば、朝食(ファーストミール)に食物繊維が豊富な食事を摂ると、昼食(セカンドミール)後の血糖値の上昇が緩やかになることが知られています。そのため、なるべくどの食事でも食物繊維をたっぷり摂るよう意識しましょう。 糖尿病に配慮した手作りお祝い膳のアイデア 誕生日にふさわしい、華やかなお祝い膳のアイデアをご紹介します。前菜・メインディッシュ・デザートの順に食べると、血糖値が上がりにくくなります。 おすすめの前菜 食物繊維がたっぷり摂れる前菜からご紹介します。 ・白身魚のカルパッチョ タイやサーモンなど、白身魚を使ったカルパッチョは、前菜の定番。魚からたんぱく質が摂れます。サラダ風に葉物野菜をたっぷり添えると、食物繊維やビタミン類も摂れますよ。ドレッシングはレモン汁やオリーブオイルの風味が立つので、塩分が少なくてもおいしく感じられます。 ・カプレーゼ風ピンチョス ミニトマトとひとくちモッツアレラチーズ、バジルまたは大葉をピックに刺すと、カプレーゼ風ピンチョスの完成。短時間で作れるだけでなく、低カロリーです。食卓を華やかに彩ってくれるため、あと一品ほしいときにおすすめ。 ・きのことサラダチキンのマリネ 食物繊維をおいしくたっぷり摂るなら、きのこを焼いてかさを減らしましょう。焼いたきのこと、ヘルシーなサラダチキンをマリネすると、さっぱりおいしい前菜が作れます。きのこを焼くことで風味がよくなり、薄味でもおいしくいただけます。 ・ごぼうのポタージュ 無理なく食物繊維をたっぷり摂れるのが、ごぼうのポタージュです。ごぼうは焼いてもかさが減らず、たくさん食べるのは難しいこともありますが、ポタージュならスルッと摂取できます。前菜は冷たいものが多いので、温かいスープを出すと満足度が高まります。牛乳や生クリームを使わず、豆乳で仕上げるのがおすすめです。 おすすめのメインディッシュ 簡単に作れる、肉と魚のメインディッシュをご紹介します。 ・簡単ローストビーフ 難しそうに見えるローストビーフですが、実は牛もも肉の表面をしっかり焼いて、熱湯を入れた炊飯器で1時間程度保温するだけで作れます。牛もも肉は脂質の少ない部位なので、カロリーを抑えやすいのもポイント。薄切りなので少量でもかさが多く見えて、見た目からも満足感が得られます。 ・マグロのステーキ 魚が好きな方は、刺身用のマグロの柵をステーキにしてみましょう。表面をサッと焼き、中心部をレアに仕上げることで、焼いてもパサつきが気になりません。肉のステーキと同じように、にんにくと一緒に焼きましょう。にんにくの味と香りで少ない塩分でもおいしくいただけます。 おすすめのデザート 特別な日なので、デザートにもこだわってみましょう。お菓子作りが苦手な人でも簡単に作れるアイデアをご紹介します。 ・糖質オフプチシューのシュークリームタワー 市販の糖質オフプチシューを使い、シュークリームタワーを作りましょう。通常のシュークリームタワーは生クリームを使って積み重ねますが、カロリーを控えるために、水切りヨーグルトを使うのがおすすめ。市販の糖質オフプチシューを2袋使うとボリュームが出て、見栄えがよくなりますよ。仕上げに好みのフルーツを周りに飾ってみましょう。 ・フルーツポンチ あまり甘いものが得意でないなら、さっぱりとしたフルーツポンチはいかがでしょうか。季節の果物を同じ大きさに切りそろえ、少量の白玉とあわせたら、カロリーゼロのサイダーを加えます。色とりどりの果物が美しく、パーティーにピッタリです。 誕生日などに外食するときのポイント 誕生日など特別な日は、外食でおいしいものを食べたい方もいるはず。ここでは、糖尿病の方が外食するときのポイントをお伝えします。 ゆっくり食べるコース料理は血糖値を上げにくい 外食時は、単品料理を頼むより、コース料理を頼みましょう。コース料理はカロリーが高そうなイメージを持たれやすいのですが、ゆっくり料理を食べること、実はあまり量が多くないことが要因となり、血糖値が上がりにくいと言われています。 中でも、フランス料理のコースがおすすめです。和食ではご飯や寿司、中華では点心やチャーハン、イタリアンではパスタ・ピザ・リゾットなど、炭水化物が主役の料理が単品で提供されることが多くあります。一方、フランス料理のコースでは、炭水化物がメインとなる単品料理はあまり見られません。パンが時折提供されますが、1~2切れ程度で済むこともあり、炭水化物の摂取量を抑えやすい傾向にあります。 「単品料理のほうが自分でコントロールできていいのでは?」と思われるかもしれませんが、普段節制していると、あれもこれもとなりやすく、コントロールしにくいのです。また、どれだけ食べればいいか判断しづらいこともあるので、やはりコース料理がおすすめです。 また、コース料理を提供するお店は、お客の要望に応えてくれることがあります。ある程度ランクが上のコースしか対応していないこともありますが、「野菜を多めにしてほしい」「油を控えた料理を増やしてほしい」「塩分を少なくしてほしい」など一度相談してみるとよいでしょう。 翌日以降の食事は気を付ける いろいろと食事のコツなどをお伝えしましたが、誕生日などの特別な日くらいは好きなものをみんなと同じように食べてもよいと考えます。その日は思い切り楽しんで、次の日からヘルシーな料理にしたり、薄味の料理にしたりして、調整しましょう。ただし、お酒の飲み過ぎは理性が鈍り、暴飲暴食の原因となるため、嗜む程度にしてくださいね。 まとめ 糖尿病の食事療法の基本は「食べてはいけないものはない」です。何を食べてもよいのですが、食べる物の種類や順番には気を付けましょう。誕生日などのお祝い膳のときも同じで、なるべく食物繊維の多い野菜から食べ始め、メインディッシュの肉や魚、デザートの順に食べ進めましょう。 お店で食事するときは、食べる量やスピードがコントロールできる、コース料理がおすすめです。お店によってはコース内容をリクエストできることもあるため、一度要望を伝えてみるとよいでしょう。また、おいしいものを食べた次の日は、ヘルシーで薄味な料理にするなど、調整できるとベストです。 これらのポイントを覚えておいて、1年に一度の特別な日を心置きなく過ごしてくださいね。

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