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高血圧の方も実践できる!塩分を控えた熱中症対策

暑さが本格化する季節には、熱中症への注意が欠かせません。しかし、高血圧を抱える方にとっては、水分補給と並んで「塩分との付き合い方」にも配慮が必要です。

今回は、高血圧の方も安心して取り組める、塩分を控えた熱中症対策をご紹介します。

目次


1. 熱中症とは?


熱中症は、高温多湿の環境に長時間さらされることで、徐々に体内の水分や塩分(ナトリウム)のバランスが崩れ、体温調節の仕組みがうまく働かなくなる状態です。その結果、体に熱がこもり、体調不良を引き起こします。


発症は屋外に限りません。室内や夜間でも起こることがあり、特にエアコンを使わない室内や、調理中・就寝中の環境では体温が上がりやすくなります(注1,2)。


【主な症状】
初期には、めまいや立ちくらみといった軽い不調から始まり、進行すると頭痛、吐き気、けいれん、意識障害などの重い症状に至ることもあります。「自分で水が飲めない」「呼びかけに反応しない」といった状態が見られる場合は、ただちに救急車を呼びましょう(注3)。


【体調変化に気づきにくい人】
高齢者、乳幼児、障害のある方などは、体温の調整が難しく、症状に気づきにくいことがあります。日ごろの様子と比べて変化がないか、周囲の人が意識して見守ることが大切です(注3)。

2. 高血圧の方が知っておきたい!塩分と熱中症対策の注意点


熱中症を防ぐには日頃の体調管理とこまめな水分補給が大切です。とくに高血圧の方は、塩分補給に際して過剰摂取にならないよう注意が必要です。暑い季節は汗で水分と塩分が失われますが、必要以上の塩分摂取はリスクとなる場合があります。

2-1.日本人の食塩摂取量と基準値

令和5年「国民健康・栄養調査」によると、日本人の1日あたりの食塩摂取量の平均は9.8g(男性10.7g、女性9.1g)であり、ここ10年ほど大きな変化は見られていません(注4)。


一方、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、食塩の摂取目標量を男性7.5g未満、女性6.5g未満としています(注5)。摂取量が多いと高血圧のリスクが高まるため、日常的に減塩を心がけることが推奨されています。


■関連記事:
血圧と塩分の関係性を解説!高血圧を防ぐための食事のポイントも紹介

2-2. 塩分補給が必要な場面と判断のポイント

一般的に「夏は塩分をとるべき」と言われることもありますが、これはあくまで大量に汗をかくような状況を想定したものです。たとえば、高温多湿の環境で30分以上の作業や運動をすると、汗とともに水分だけでなくナトリウムなどの電解質(カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)も失われます。このような場合、水分だけを補給すると電解質が不足し、熱中症の原因となるおそれがあります。


ただし、日常生活で軽く汗ばむ程度であれば、通常の食事で必要な塩分は十分まかなえています。高血圧の方が安易に塩分を補給すると、血圧に影響を及ぼす可能性があります。発汗の程度や体調に応じて、塩分濃度0.1~0.2%程度のスポーツ飲料等(注3)を活用するかどうか、慎重に判断しましょう。


なお、経口補水液は熱中症対策に効果的とされていますが、日常的に飲むものではなく、脱水症状や大量の発汗があった際の水分・電解質補給を目的としています(注6)。


※汗の量や運動・作業の時間には個人差があり、明確な基準はありません。自分の体調や環境に合わせて塩分や水分の補給方法を判断することが大切です。
※スポーツ飲料の中には糖分を多く含むもの(500mlあたり30g以上)もあるため、過剰な摂取による糖分のとりすぎに注意しましょう(注3)。
※電解質:体内で電気を帯びて働く成分。水分バランスの調整や筋肉・神経の働きに関与します(注6)。

2-3.医師との相談も忘れずに

高血圧で治療中の方は、水分や塩分のとり方について、あらかじめ主治医に相談しておくと安心です。自己判断で塩分をとりすぎると、かえって体調をくずすおそれもあります。


経口補水液の活用や水分補給のタイミングも含めて、医師や管理栄養士と相談しながら、自分に合った熱中症対策を見つけましょう。

2-4.周囲の人も正しい知識を

家族や介護を担う方は、高血圧の方がなぜ塩分を控えているのか、また減塩でもできる熱中症対策について理解しておくと安心です。「暑いから」「汗をかいたから」といった理由で、塩分の多い食品や飲料をすすめないよう、身近な人と情報を共有しておくことも大切です。

3. 高血圧の方が取り入れたい熱中症対策のポイント


塩分のとり方に注意が必要な高血圧の方にとって、夏を健やかに乗り切るには、水分補給・食事・生活環境など、さまざまな視点からの対策が欠かせません。家族や周囲の理解とともに、無理なく実践できる工夫を確認しておきましょう。


<水分補給・食事の工夫>

●適切な水分補給を心がける
喉が渇いていなくても、こまめに水や麦茶などをとることが基本です。1回につきコップ1杯(200mL程度)を目安に、時間をあけすぎずに少しずつ補給しましょう。汗をかいた後や起床時は、意識的な水分補給が大切です。


●塩分以外のミネラルを意識する
汗とともに失われる電解質にはナトリウムのほか、カリウムやマグネシウム、カルシウムなども含まれます。なかでもカリウムは、体内のナトリウム排出を助け、血圧の安定に役立つ栄養素です(注5)。野菜、果物、豆類、海藻類などに多く含まれるため、日々の食事に取り入れてみましょう。


ただし、腎機能に不安がある場合は、カリウムが体にたまりやすくなることがあるため、医師や管理栄養士にご相談ください。


●食事の工夫でおいしく減塩
暑さで食欲が落ちると、味の濃いものに偏りがちです。しかし、工夫次第で、塩分を控えながらも満足感のある食事は可能です。


・だしのうま味を活かす:いりこ、干ししいたけ、かつお節などの天然だしで、塩分控えめでも風味豊かに。
・薬味や酸味で味に変化を:ミョウガ、シソ、生姜、酢、レモン、スパイスなどを加えることで、塩分が少なくても満足感を高められます。
・汁物はほどほどに:みそ汁や麺類のスープは飲み干さず、具材中心に楽しみましょう。
・夏野菜を上手に活用:トマトやきゅうりなどの夏野菜は、みずみずしく食べやすいだけでなく、カリウムや水分の補給源としても役立ちます。暑い時季に取り入れやすい食材として、日々の食事に取り入れてみましょう。


■詳しくはこちらも参考に
減塩習慣を始めよう!塩分を控える理由と減塩のコツ


<日常生活の工夫で暑さを避ける>

・暑さを避ける
屋外では直射日光を避け、なるべく風通しのよい場所で過ごすようにしましょう。外出時は日陰を選び、帽子をかぶる、日傘を使うなどして、こまめに休憩をとりながら行動することが大切です。


・身体を冷やして負担を減らす
通気性の良い服を着て、室内ではエアコンや扇風機を活用しましょう。保冷剤や冷感タオル、冷却シートなどを使い、首・わきの下・足の付け根などを冷やすことで、効率よく体温を下げることができます。

4. 熱中症も減塩も!日常に取り入れやすいおすすめメニュー


忙しい日々でも手軽に取り入れられる、低塩・ミネラルを補給できるメニューをご紹介します。これらのメニューは火を使わずに作れるので、暑さの厳しい日でも気軽に用意できます。


4-1 レシピ名:「冷やしトマトの薬味のせ」

トマトに香味野菜を添え、少量の塩で味を引き立てる、さっぱりとした一品です。塩分は控えめながら、シソやミョウガの風味で満足感のある味わいに仕上がります。


<作り方>
①トマトを冷やしておき、くし形または輪切りにします。
②シソとミョウガを洗い、細かく刻みます。
③器にトマトを並べ、上から薬味をのせます。
④塩をひとつまみふりかけ、酢を少量まわしかけます。
⑤好みでオリーブオイルまたはごま油をほんの少し加えても風味が引き立ちます。
※調味料は控えめにして、素材の味わいを大切にしてください。


4-2 レシピ名:「フルーツヨーグルト」

果物の自然な甘みと酸味を活かした、さっぱりとしたデザートです。カリウムやビタミンが摂れ、無糖ヨーグルトを使うことで糖分を抑えられます。


<作り方>
①お好みの果物(例:キウイ、バナナ、いちごなど)を一口大にカットします。
②無糖ヨーグルトを器に入れます。
③カットした果物をヨーグルトにのせ、軽く混ぜ合わせます。
④必要に応じてレモン汁を少量加えると、酸味が引き立ちます。
※甘みや油分は控えめに、果物とヨーグルトの風味をお楽しみください。

5. まとめ

高血圧の方は、塩分を控えつつも水分やミネラルをこまめに補給し、冷房や日陰を活用して暑さを避けることが大切です。味つけや食材の工夫で減塩生活を無理なく続けましょう。体調に変化があれば早めに医療機関に相談を。周囲も正しい知識を持って支えることが安心につながります。

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参考文献

注1)厚生労働省「熱中症予防のために」
注2)厚生労働省「高齢者のための熱中症対策」
注3)環境省「熱中症環境保健マニュアル 2022」
注4)厚生労働省「令和5年「国民健康・栄養調査」の結果」
注5)「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(多量ミネラル)
注6)消費者庁 「経口補水液ってなに?」

この記事を書いた人

横川仁美
管理栄養士
管理栄養士の資格を取得後、保健指導や重症化予防を中心に2500人以上へのアドバイス提供。 現在は食専門ライター×料理研究家として執筆・監修、 また企業のブランドイメージに沿ったレシピ提案を行っている。

監修者紹介

木村眞樹子医師
東京女子医科大学医学部卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。 妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。 医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

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    なぜ塩分を摂りすぎると血圧が上がるの? 塩分を摂りすぎると血圧が上がる主な理由は、体内で水分のバランスが崩れるためです。具体的には、塩分(ナトリウム)を過剰摂取すると、体内の塩分を薄めようとして水分を保持します。この水分量の増加が血液量の増加につながり、結果として血管内の圧力、つまり血圧が上昇します。加えて、ナトリウムの血管を収縮させる作用も、血圧上昇に関与しているのです。 また、高血圧になると以下のような重大な合併症を引き起こすリスクが高まります。 ・動脈硬化 ・脳卒中(脳出血・脳梗塞) ・心疾患(狭心症・心筋梗塞) ・腎臓病 ・認知症 したがって、塩分の摂取を控えることは血圧管理に重要であり、合併症の予防に効果的です。 塩分を控えるだけでは不十分? 血圧を下げるために塩分摂取量を控えることは非常に重要ですが、高血圧の原因は塩分だけではありません。 【塩分以外の高血圧の原因】 ・肥満 ・喫煙 ・過剰なアルコール摂取 ・運動不足 ・睡眠不足 ・ストレス 肥満は心臓や血管に負担をかけ、血圧を高めます。喫煙はタバコに含まれるニコチンが血管を収縮し、血圧を上昇させます。 また、アルコールの過剰摂取も血圧を急激に上げる原因です。さらに、運動不足や長期的なストレス、睡眠不足は体の自然な血圧調整機能を妨げ、血圧を高めることになります。 これらの要因が絡み合うことで高血圧が進行するため、まずは健康的な生活が送れているか、見直しが必要です。もし運動習慣がないのであれば、毎日30分歩く、エレベーターを使わず階段を歩くなど適度な運動を取り入れてみましょう。 特に減量は効果的で、1kg減量にあたり最高血圧は約1mmHg、最低血圧は約0.9mmHg低下すると言われています(※1)。禁煙や節酒、十分な睡眠を確保することも、適正な血圧維持に役立ちます。 カリウムの摂取も重要 カリウムには体内の余分なナトリウムを排出する働きがあることから、高血圧の予防に効果的とされています。生活習慣病の予防を目的に、1日のカリウムの摂取量を以下のように定めています(※2)。 成人男性:3,000mg以上/日 成人女性:2,600mg以上/日 カリウムは野菜や果物、海藻に多く含まれているため、日頃からこれらの食品を意識して取り入れるとよいでしょう。 <カリウムを多く含む食品の例> 代表的な食品 野菜・ブロッコリー・ほうれん草・きゅうり・枝豆 など 果物・バナナ・スイカ・アボカド・キウイフルーツ など 海藻・わかめ・昆布・ひじき など なお、カリウムは水に溶けやすいという性質があります。野菜を水にさらしすぎると、カリウムの摂取量が減ってしまうため、なるべく短い時間に留めましょう。カリウムを余さず摂取するには、汁ごと食べられるスープがおすすめです。 高血圧を防ぐための食事のポイント 1日の塩分摂取量は、健康的な成人で男性/7.5g未満、女性/6.5g未満と定められています(※2)。すでに高血圧と診断されている場合、合併症を防ぐために1日の塩分摂取量は6g未満に抑えることが推奨されています(※1)。 塩分摂取量の目標量を数値だけで見ると分かりづらいかもしれませんが、実は普段の食事には多くの塩分が含まれているのです。 料理名塩分相当量 醬油ラーメン5.7g カレーライス3.3g 鮭の塩焼き1.4g 食パン(6枚切1枚あたり)0.8g しかし、ただ塩分を減らすのでは味気のない食事になり、長く続けられません。減塩生活は長く続けてこそ効果を発揮するため、無理なく続けるための食事のポイントを紹介します。 家庭での減塩ポイント 家庭では、以下の基本的なポイントを抑えましょう。 ・出汁・香辛料・香味野菜・減塩調味料を上手に活用 ・汁物は具を増やす ・野菜は1日350g以上 塩分を減らしただけの食事は、おいしいとは言えません。そのため、塩分を減らす際は「出汁を効かせる」「カレー粉や唐辛子などの香辛料を活用する」「大葉やにんにくなどの香味野菜を使う」「減塩醤油や減塩味噌などの減塩調味料を取り入れる」といった工夫が必要です。これらの方法には塩味をカバーする働きがあり、少ない塩分でも味をしっかりと感じられるようになります。 また、汁物は塩分が多くなりやすく、味噌汁1杯に約1.2gの塩分が含まれています。汁物は野菜の補給源となるだけでなく、味噌などの発酵食品により腸の調子を整えられるなど、メリットがたくさんあります。そのため、汁物を食べるときは汁をいつもの半分程度に減らし、その分具をたっぷり入れるとよいでしょう。 塩分を抑えるテクニックは、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。 減塩習慣を始めよう!塩分を控える理由と減塩のコツ そして野菜は1日350g以上摂ることで、カリウムが適量摂取できると期待されてます(※3)。具体的には、小鉢5皿分を目安にしましょう。1食に1~2皿の野菜の小鉢を加えるのが理想です。毎食野菜を使った副菜を作るのが難しいときは、常備菜を作っておいたり、お惣菜を活用したりする方法もあります。ただし、お惣菜の場合は成分表示を確認し、なるべく塩分の少ないものを選ぶとよいですね。 外食時の減塩ポイント 外食は家庭とは異なった注意点があります。 ・出汁・香辛料・香味野菜・減塩調味料を上手に活用 ・サラダなど野菜料理は積極的に注文 ・麺類の汁は必ず残す ・アルコールは適量 例えばランチタイムはゆっくりできないことも多く、丼ものなど単品で注文しがちですが、塩分摂取量が多くなるだけでなく、野菜が不足しカリウムを十分に摂取できない可能性が高くなります。そのため、できるだけいろいろな食品が食べられる定食を注文するようにしましょう。もしサラダなど野菜のおかずがあれば、積極的に注文するといいですね。 また、麺類の汁は残すのが鉄則です。麺よりも汁に塩分が多く含まれているため、汁を残すだけでも減塩につながります。 外食時、アルコールを注文することもあると思いますが、過度な飲酒は禁物です。血圧を上げるだけでなく、アルコールにより理性が鈍り、暴飲暴食して塩分を過剰摂取する可能性があります。 腎臓病でカリウム制限がある方への注意点 先ほど、カリウムは高血圧予防に効果的と説明しましたが、腎臓病のステージ3b以降の方はカリウム制限が必要です(※4)。 ステージカリウム ステージ1~3a制限なし ステージ3b2,000mg未満/日 ステージ4~51,500mg未満/日 出典:CKDステージによる食事療法基準より「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」 これは、腎臓の機能が落ちていると体内のカリウムが排出されにくくなるからです。本来カリウムは余分な塩分を排出するなど、体によい働きをしますが、血液中のカリウムが増えすぎると不整脈などの原因となります。腎臓病によりカリウム制限が必要な方は、野菜を茹でこぼしてから食べたり、カリウムの多い食品を極力減らすといった工夫が必要です。 なお、人によって状態が異なりますので、必ずかかりつけ医や管理栄養士に指示された食事療法を実行するようにしましょう。 まとめ 塩分の過剰摂取を長く続けると、高血圧のリスクが高まります。ただ血圧が高くなるだけでなく、心疾患や脳卒中などの重大な疾病を招く可能性があるため、早めに対策するとよいでしょう。食事面での高血圧予防は「減塩を心掛ける」「カリウムを意識して摂る」の2点が効果的です。健康を守るためにも食事の塩分量やカリウム摂取量を見直し、適切な生活習慣を心がけましょう。

  • 腸と免疫力の深い関係!腸活で免疫力を高めるために知っておきたいこと

    1. 腸と免疫機能の関係 免疫とは、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体を「異物」として攻撃し、身体を守る仕組みのことです(注1)。腸は単なる消化器官ではなく、体内最大の免疫器官でもあり、免疫細胞の約70%が腸に集まっています(注2)。 食事を通じて、ウイルスや病原菌が体内に入るリスクがあるため、腸内には免疫細胞や抗体が多く存在し、これらが有害な物質の侵入を防いでいます。 <腸の免疫機能について> 免疫反応には、白血球などの免疫細胞が病原体を攻撃する方法と、抗体が直接異物を攻撃する方法があります。腸には、身体全体のリンパ球の約60%が集まり、抗体の約60%も腸内で生成されます。このことから、腸は免疫機能の中心的な役割を果たしていることがわかります。 2. 腸内環境が心と身体に与える影響 腸内環境は免疫機能だけでなく、私たちの心と身体の状態にも深く関わっています。近年注目されているのが「脳腸相関(のうちょうそうかん)」という考え方です。これは、腸と脳が神経やホルモン、免疫系を通じて双方向に影響し合っているというもので、腸の状態が精神の安定やストレス耐性に影響を及ぼすことがわかってきました(注3)。例えば、ストレスを感じると腸の働きが乱れ、腹痛や便秘、下痢などの症状が現れることがあります。逆に、腸内環境が悪化すると、不安やイライラを感じやすくなることも知られています。 また、腸は「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌にも関与しています(注4)。セロトニンは精神の安定に重要な役割を果たしており、その約90%が腸で生成されていると言われています(注4)。そのため、腸内環境が乱れると、気分の浮き沈みが激しくなったり、ストレスに対する耐性が低くなる可能性があります。腸の状態は、単なる消化や吸収の問題にとどまらず、心の健康にも大きな影響を与えることがあると考えられているのです。 3. 腸内環境をチェック!便の状態からわかること 腸内の状態を簡単にチェックする方法として、便の観察があります。便は食事内容や栄養状態、腸内細菌のバランスを反映するため、健康状態を知るための重要な指標となります(注5)。 3.1 便のチェックポイント ・色 健康な便は黄色がかった茶色です。黒っぽい便や白っぽい便は注意が必要です。腸内の不調があるかもしれません。 ・形 理想的な便はバナナの形状で、適度な硬さがあります。丸い塊や硬すぎる便は便秘を示し、柔らかすぎる便や水っぽい便は下痢の兆候です。 ・臭い 健康な便には少しのにおいがありますが、異常に臭い場合、腸内のバランスが崩れている可能性があります。 3.2 排便の頻度 理想的には1日1回、毎日決まった時間に便が出るのが望ましいですが、人によっては1日に2~3回、あるいは週3回の排便でも正常範囲とされています。便秘が続く場合や、逆に頻繁に下痢をする場合は、腸内環境に問題がある可能性があります。 3.3 便のタイプをチェックする方法 便の状態を簡単に確認するために、「ブリストルスケール」という分類を使用することが役立ちます。このスケールを参考にすることで、自分の便の状態が正常かどうかを確認できます。 ブリストルスケールは、便の硬さや水分量に基づいて7つのタイプに分類されます。数字が小さいほど便は硬く、大きくなるにつれて水分量が増えていきます。一般的に正常とされる便のタイプは3~5です。 タイプ形状 タイプ①小さくて硬い・コロコロ便(うさぎのような糞の便) タイプ②コロコロの便がつながった便 タイプ③水分がなく、表面にひび割れがある便55 タイプ④(正常)適度にやわらかいバナナ状のなめらかな便 タイプ⑤水分が多く、やわらかい便 タイプ⑥境界がほぐれてふわふわと泥状の便 タイプ⑦塊がない、水のような便 4. 健やかな排便リズムを整える腸活のポイント 腸のリズムを整えることは、毎日の快適な排便をサポートし、生活全体の質をアップさせるためにとても大切です。ここでは、腸の働きを整え、心地よい毎日を過ごすための簡単な方法を紹介します。 ① 朝の習慣を整える 朝起きた後にコップ1杯の水を飲むと、腸が刺激され、排便が促されやすくなります。また、朝食をしっかりと取ることも、腸の動きを助けます。 ② 食事で腸をサポート 腸内環境を整えるためには、食事内容にも気を付けましょう。腸に良い影響を与える食材を積極的に取り入れることで、腸の健康をサポートできます(注6,7,8)。 ・発酵食品 腸内環境を良好に保つためには、善玉菌の摂取が効果的だと言われています。発酵食品を摂ることで、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌(プロバイオティクス)を直接取り入れることができます。ただし、これらの菌は体内に長くとどまることがないため、継続的に摂取することが重要です。ヨーグルト、納豆、味噌など、発酵食品を日々の食事に積極的に取り入れるようにしましょう。 ・食物繊維 食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があります。水溶性食物繊維は善玉菌の栄養源(プレバイオティクス)となり、腸内で善玉菌を増やします。不溶性食物繊維は水分を吸収し、腸を刺激して活性化します。野菜、海藻、豆類などを積極的に摂ることで、腸内環境が整いやすくなります。 ・オメガ3脂肪酸 いわし、さば、さんまなどに含まれるEPAやDHAのオメガ3脂肪酸は、体内で合成できない必須脂肪酸です(注9)。これらの脂肪酸は腸内で善玉菌が増えやすい環境を作ることが報告されています(注10)。 腸と脳は密接に関連しているため、食事を見直すことで腸内の状態を整えるだけでなく、脳機能にも良い影響を与えることが期待できます。実際に、プロバイオティクスやオメガ3脂肪酸が脳腸相関を通じて、脳の健康にも良い効果をもたらすことが研究でも示唆されています(注3,10)。 ③ 腸の動きを活発にする生活習慣 適度な運動は腸の動きを活発にします。ウォーキングや軽いストレッチなど、無理なく続けられる運動を習慣にしましょう。 ④ 排便のタイミングを意識する 毎日同じ時間帯に排便を試みることが、腸のリズムを作ります。特に朝起きた後にトイレに行く習慣をつけることで、自然な排便が促されます。 5. 腸活を続けるためのポイント 腸活は一度やって終わりではなく、続けていくことが大切です。無理なく習慣化するためのポイントをいくつか紹介します。 ① 自分に合った腸活を見つける 腸活を続けるためには、自分に合った方法を見つけることが重要です。偏りはいけませんが、食材には合う合わないがあると言われています。さまざまな発酵食品や食物繊維の摂取方法を試しながら、自分の体に合った食材を見つけましょう。また、運動習慣も無理なく続けられるものを選ぶことが大切です。例えば、毎朝5分間のストレッチなど、手軽にできる運動から始めて、無理なく取り入れていきましょう。 ② 記録をつけて便の変化を把握する 腸活を続けるためには、進捗を可視化することが効果的です。便の状態や食生活を記録することで、腸内環境の変化を把握しやすくなります。記録をつけることで改善のポイントが明確になり、モチベーションを維持する助けにもなります。自分の身体の変化を実感することで、腸活を続けやすくなるでしょう。 ③ 楽しみながら取り入れる 腸活を楽しみながら続けることが、長期的な成功の秘訣です。好きな発酵食品を見つけて食事に取り入れることや、家族や友人と一緒に腸活を楽しむことができれば、無理なく習慣化できます。楽しむことで、腸活が生活の一部となり、続けることが自然に感じられるようになります。 6. まとめ 腸活は生活習慣の一部として取り入れることで、腸内環境が整い、健康全体に良い影響を与えることが期待できます。まずは自分に合った食事や運動を見つけ、無理なく続けることが大切です。また、進捗を記録して腸の変化を実感しながら、楽しんで取り組むことが、腸活を長期的に続けるためのポイントです。

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