※電話受付:日曜・年末年始休業

受付時間:9:00-17:00(月~土) ※日曜・年末年始休業

腎臓病でもおやつは食べられる?管理栄養士が教える選び方や注意点

腎臓病は、生活習慣病やメタボリックシンドロームなど、さまざまな原因によって腎臓の血管がダメージを受けることで発症します。腎臓の機能を維持するには食事療法がとても大切で、具体的にはたんぱく質、カリウム、リン、食塩などの制限が必要です。しかし、多くの食品が制限されるため、食事に対してストレスを感じてしまう方も少なくありません。

そこで役立つのが「おやつ」です。この記事では、腎臓病の方におやつが必要な理由から、おすすめのおやつ、そして注意点までを詳しくご紹介します。上手に取り入れて、日々の食事療法を乗り切りましょう。

目次


腎臓病の方にとっておやつが必要な理由


おやつは単なる嗜好品ではなく、心と体の健康維持につながります。

食事制限によるストレスの軽減

腎臓病の食事制限は厳しく、食べたいものが食べられないという状況は大きなストレスとなります。おやつは、食事とは違った楽しみを味わえ、いつもの単調な食事からくるストレスを一時的に忘れさせてくれるもの。医師や管理栄養士と相談の上、病状に合わせたおやつを選ぶことで、心の負担を軽減し、治療を続けるモチベーションを保つことにつながります。

食事量不足によるエネルギー不足の補給

制限される食材が多いことから、食欲不振がある場合には、必要なエネルギーや栄養素が不足しがちです。特に高齢の患者さんは低栄養になったり、体重が減少したりするリスクが高まります。そういった方にとっておやつは、少量でも手軽にエネルギーを補給できるため、低栄養状態を防ぎ、体力の維持に役立てるお助けアイテムとなるのです。

精神的な満足感とQOLの向上

おやつは、単なる栄養補給ではありません。精神的な満足感をもたらし、生活の質の向上(QOL)に大きく役立ちます。好きなものを少量でも食べられるという喜びは、日々の生活にメリハリが生まれ、きゅうくつな食事制限の中でも前向きな気持ちを保つモチベーションとなるでしょう。また、家族や友人と一緒におやつを楽しむ時間は、コミュニケーションの機会にもなり、孤立感を防ぐ上でも重要です。

腎臓病のおやつの基本の考え方


おやつを選ぶ際も、食事療法の考え方をベースとします。ここでは、覚えておいてほしい基本の3点をご紹介します。

塩分・たんぱく質・カリウム・リンが控えめのおやつを選ぶ

腎臓病の食事療法では、塩分、たんぱく質、カリウム、リンの摂取量を制限することが基本となります。おやつを選ぶ際も同様で、これらの成分が多く含まれているおやつを選んでしまうと、普段の食事で制限していても、トータルでの摂取量が増えてしまい、腎臓に負担をかけてしまう可能性があります。


 

【食事療法中は控えたいおやつの例】
・塩分の多いおやつ:スナック菓子、珍味(するめ、さきいか)など
・たんぱく質の多いおやつ:豆菓子、魚肉ソーセージ、乳製品(ヨーグルト、チーズ)など
・カリウムの多いおやつ:ドライフルーツ、チョコレート、ナッツ類、いも類のおやつ(スイートポテト)など
・リンの多いおやつ:乳製品、いも類のおやつ、チョコレート、ナッツ類など


これらの成分が控えめなものを選ぶか、管理栄養士と相談して摂取量を調整しましょう。

食事を基本に+αでおやつを取り入れる

おやつは、あくまで通常の食事で不足しがちな栄養を補ったり、気分転換を図ったりするための「+α」と捉えましょう。おやつで必要な栄養を摂ろうとすると、かえって特定の成分を過剰摂取してしまう可能性があります。


おやつの目安としては、1日の必要エネルギーの約10%程度(100〜200kcal程度)に抑えるのが一般的です。市販品であれば、栄養成分表示を必ず確認し、手作りの場合は、使用する食材の成分を考慮して工夫することが大切です。

食べる量は決めておく

「少しだけ」「もう一口だけ」といった気持ちから、ついつい食べ過ぎてしまうのがおやつです。そこで、袋から直接食べるのではなく、まずはお皿に食べる分だけ出してから食べ始める、小袋に入ったおやつを選ぶ場合は1袋だけにする、などの工夫が有効です。残りはすぐに棚にしまうなど、目に入らない場所に片付けることで、食べ過ぎを防ぐことができます。事前に量を決める習慣をつけることで、無理なく食事療法を続けられるでしょう。

腎臓病の方におすすめのおやつ


ここでは、腎臓病の方におすすめのおやつとその栄養価をご紹介します。[1]ぜひ日々のおやつ選びの参考にしてください。


種類1個当たりの重量(g)エネルギー(kcal)たんぱく質(g)カリウム(mg)リン(mg)塩分(g)
5(1粒)1900.100
水ようかん80(1個)1342.113.618.40.08
八つ橋24(1個)660.98.410.10
くず餅95(1個)880.11.02.90
みたらし団子55(1本)1071.832.528.60.33
せんべい(しょうゆ)15(1枚)551.019.5180.2
リーフパイ21(1個)1171.216.28.80.02
シャーベット100(1本)1280.995220

※栄養価はメーカーによって異なるため、パッケージをよくご確認の上、選ぶことをおすすめします。

飴は、主に砂糖でできており、手軽にエネルギーを補給できます。たんぱく質やカリウム、リンなどの腎臓病で制限が必要な成分がほとんど含まれていないため、安心して食べられるおやつの一つです。ただし、糖分の摂りすぎには注意し、適量を心がけましょう。食欲がない時のエネルギー源としても役立ちます。

水ようかん

小豆にはカリウムが多く含まれますが、水ようかんは小豆を水で薄めているため、比較的カリウムが少なくなります。また、たんぱく質も控えめなので、安心して食べやすいでしょう。口当たりよいため、食欲がないときでも食べやすいおやつです。

生八つ橋

京都銘菓の生八つ橋も、カリウムやリンの含有量が少なく、安心して食べられます。特に、つぶあんよりもこしあんタイプがおすすめです。もちもちとした食感と上品な甘さが特徴で、少量でも満足感を得やすいでしょう。

わらび餅・くず餅

わらび餅やくず餅は、たんぱく質、カリウム、リンのいずれも少ないのが魅力です。ただし、添えられている黒蜜はカリウムが多く含まれるため、かけすぎには注意が必要です。きな粉もカリウムやリンを含むため、少量にするか、なしで食べるのが良いでしょう。

みたらし団子

お団子の主成分である米粉は、カリウムもリンも比較的少ないため、安心して食べられます。1本でも満足感があり、食べ応えもあるので、小腹を満たすのに最適です。ただし、タレの塩分量には注意し、食べ過ぎないようにしましょう。

せんべい

せんべいは、塩分が多めなので、たくさん食べることはおすすめできません。しかし、小袋に入ったものを選び、1袋だけにするなど量を決めて食べるのであれば、許容範囲内です。また、塩分の少ない南部せんべいを選んだり、減塩タイプのせんべいを選ぶと、より安心して食べられます。

リーフパイ

リーフパイのようなパイ系のお菓子も、食べ過ぎなければ比較的カリウムやリンが少ない傾向にあります。中でも小袋に入ったものなら、量をコントロールしやすくおすすめです。

無果汁のシャーベット

暑い日や食欲がない時にも食べやすいシャーベットですが、果汁を使ったものはカリウムが多くなりやすいので注意が必要です。そのため、サイダー味やレモン味など、果汁をほとんど使用していないタイプを選ぶのがおすすめです。

腎臓病用おやつ

市販の腎臓病用おやつは、栄養成分が調整されているため、より安心して食べられます。「アガロリー」や「エネルギーゼリー」、「エネプリン」のようなゼリー状のものから、たんぱく質調整ビスケット、カステラ、せんべいなど、さまざまな種類があります。日々の食事管理をされている中で、より安心しておやつを選びたい方は、これらの商品を活用するのもおすすめです。

腎臓病のおやつに関する注意点


おやつは腎臓病の食事療法を続ける上で大切な役割を果たしますが、いくつか注意すべき点があります。

水分制限がある方はおやつの種類に注意

腎臓病のステージや尿の出方によっては、医師から水分制限の指示が出ることがあります。このような場合、知らず知らずのうちに水分を摂りすぎてしまわないよう、おやつの種類にも注意が必要です。


腎臓病のステージや尿の出方によっては、医師から水分制限の指示が出ることがあります。このような場例えば、ゼリーやプリン、アイスクリームなどは、見た目以上に多くの水分を含んでいます。喉越しの良いこれらのおやつは、ついつい食べ過ぎてしまいがちですが、水分制限がある場合は摂取量に気をつけましょう。医師や管理栄養士と相談し、水分量を確認しながら、適切なおやつを選ぶことが大切です。

必ずかかりつけ医・管理栄養士の指示に従う

腎臓病の進行度合いや合併症の有無など、患者さん一人ひとりの状態は大きく異なります。そのため、必要な食事制限の内容も人それぞれです。インターネットや本で得た情報だけで、「これは大丈夫だろう」「これはやめておこう」と自己判断してしまうのは大変危険です。


おやつを選ぶ際も、必ずかかりつけ医や管理栄養士の指示に従ってください。何を食べても良いのか、どのくらいの量なら許容されるのかを具体的に確認し、適切な指導を受けることが大切です。

おやつを取り入れて上手に腎臓病と付き合おう

おやつは日々のストレスを和らげ、必要なエネルギーを補給できるため、腎臓病患者さんにとって大切な役割を担っています。おやつを選ぶ際の基本は、食塩、たんぱく質、カリウム、リンが少ないものを選ぶことです。これらのポイントを押さえ、食事療法を無理なく続けながら、おやつを楽しみましょう。

SNSでシェア

参考文献

[1]文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)増補2023年

この記事を書いた人

端場愛
管理栄養士
学生寮や老人保健施設で実務経験を積んだのち、フリーランスの管理栄養士に。食べ物と体の関係を分かりやすく伝え、少しでも多くの人に健康になってもらうことを目標に、ライターとして活動中。

監修者紹介

木村眞樹子医師
東京女子医科大学医学部卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。 妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。 医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

おすすめ商品

関連記事

  • 糖尿病でも外食OK!血糖値を上げない食べ方とおすすめメニュー3選

    糖尿病でも外食はしてよい? 血糖値のコントロールが気になり、なかなか外食にいけない方もいるでしょう。確かに、外食は量が多い、味付けが濃いなどで自炊よりも血糖値のコントロールは難しいのは事実です。しかし、外食でもあるポイントをおさえれば血糖値のコントロールは可能です。 血糖値を気にせず外食を楽しむためにも、まずは外食がなぜ血糖値の乱れにつながりやすいかを知ったうえで、血糖値の急上昇をおさえる外食の食べ方のコツを理解しましょう。 外食の注意点 まずは、外食がなぜ血糖値のコントロールが乱れやすいといわれているかを確認しましょう。これを知ることで今後の血糖値のコントロール対策がとりやすくなりますよ。 量が多い 外食は基本的に量が多いです。一般的に、ごはんは普通盛りでも250~300gもあります。糖尿病の食事療法の指標である「糖尿病食事療法のための食品交換表」では、1600kcalの指示エネルギーの場合、1食のごはんの量は150gです。このことからも、外食のごはんの量の多さが分かりますよね。 さらに、場所によってはおかずの量も1人前以上となり、食塩の摂り過ぎにもつながるおそれがあるのです。糖尿病がある方は高血圧のリスクも高くなるとされるため、食塩の摂取量にも気を付けたいものです。 あぶらや糖が多い 外食では、おいしさを追求するため、味付けが濃かったりあぶらの使用量が増えたりします。そのため、血糖値の急上昇がおきやすいだけでなく、油の作用で血糖値が下がりにくくなるおそれもあるのです。さらに、油はカロリーが高く、摂り過ぎは体脂肪増加の原因にもなります。体脂肪が増加するとインスリンが効きづらい状態につながり、さらなる血糖値の上昇が起きるおそれもあります。 以上のことから、血糖値と体重、どちらのコントロールのためにも外食を頻回に利用するのは避けたいのも事実です。 野菜や魚のメニューが少ない 一般的に、野菜や魚の摂取量が多いと血糖値のコントロールがしやすいとされています。しかし、外食は野菜や魚のメニューが少なく、自然と肉や加工品などの摂取が増えてしまいます。特にソーセージやベーコンなどの肉の加工品の摂取が多いと、血糖値の乱れにつながるだけでなく、高血圧症や脂質異常症のリスクが高まるおそれもあるのです。 外食で血糖値を上げすぎないコツ5選 外食がなぜ血糖値が上がりやすいかがわかりましたね。次に、血糖値を上げにくい外食のポイントを5つ紹介します。血糖値を気にせずに外食を楽しむためにも、以下を意識してみてください。 1. ごはんは小盛りにする 2. 定食や野菜のサイドメニューを積極的に選ぶ 3. 野菜やたんぱく質から先に食べる 4. よく噛む 5. アルコールは20g程度にする まずは血糖値が上がりやすいごはんを、あなたの適正量に出来る限り近づけましょう。ごはん小盛りで約茶碗1杯程度なので、基本は小盛りを選んでください。ごはんを減らした分、満足感を高めるためにも、小鉢の多い定食系を選んだり野菜のサイドメニューを追加したりするようにしてください。 麺類を食べるときは食物繊維が不足しやすいため、もやしやわかめなどのトッピングを追加できるとよいですね。さらに、食べ方も重要です。野菜やたんぱく質から食べたりよく噛んだりすることで、血糖値の上昇が緩やかになることがわかっています。 またお酒については、医師からの指示がない限り飲んでも問題はありません。しかし、合併症予防としてアルコール換算で20gまでにすると良いですね。各お酒の純アルコール量20g相当の量は以下です。 (表1)純アルコール量20g相当の酒量 お酒の種類量 ビール中瓶1本(500ml) 日本酒1合(180ml) ハイボール3合缶1本(原液60ml) ワインワイングラス2杯(200ml) このように、量や食べ方を意識すれば、外食でも血糖値の良好なコントロールは叶います。 外食組み合わせ例3選 外食での血糖値の急上昇をおさえるポイントを紹介しましたが、いざ実践するとなると、どんなものを食べたら良いか迷う方も多いのではないでしょうか。そこで、血糖値を上げすぎない外食例を紹介します。まずはここを真似て、徐々にコツをつかんでくださいね。 焼さば定食 【栄養価】 カロリー 615kcal たんぱく質 32g 脂質 22g 炭水化物 84g 食塩相当量 4.7g さばといった青魚の脂は、脂肪燃焼や血液サラサラ作用も期待できます。さらに、魚にはビタミンDやカルシウムなど、骨の健康を維持する栄養素も豊富です。実は、糖尿病がある方は、骨粗鬆症や骨折のリスクが約2倍高まるとされています。骨の健康を維持するためにも魚は積極的に選びたいですね。 注意点としては、塩さばは食塩が多いため、高血圧対策として漬物や味噌汁を摂り過ぎないようにしましょう。例えば、味噌汁を残した場合、4.7gから2.7g程度まで食塩相当量が減らせますよ。また、さばは脂が多い種類のため、カロリーオーバーとならないよう、ごはんは必ず小盛りにしてください(外食での小盛りの目安:約160g)。 ※【大手外食チェーン3社の小盛り平均より算出】 かけそば+鶏天+卵+わかめとねぎ 【栄養価】 カロリー 515kcal たんぱく質 32g 脂質 16g 炭水化物 65g 食塩相当量 3.5g 一般的にそばは、うどんや中華麺よりもGI値(グリセミック・インデックス)※が高いため、麺類を食ぶ際は積極的にそばを選べると良いですね。しかし、麺類全般の傾向として、たんぱく質や食物繊維が不足しやすい、早く食べ終えてしまうため、血糖値は上がりやすいです。そのため、鶏肉や卵、わかめやねぎなどで必要な栄養素を補ってあげましょう。 また、よく噛むことも血糖値の上昇を穏やかにする作用が期待できますので、ぜひ意識してみてください。 ※GI値(グリセミック・インデックス):血糖値の上昇のしやすさの指標のこと。低いほど血糖値の上昇は緩やかとされる。 牛皿定食にサラダ 【栄養価】 カロリー 740kcal たんぱく質 27g 脂質 29g 炭水化物 37g 食塩相当量 3.3g 手軽に食べられる牛丼ですが、実はたれがごはんに染み込むことで、必要以上に糖や食塩を摂り過ぎてしまい、血糖値や血圧上昇のおそれがあるのです。さらに、サラサラとした形状にもなり、かき込みやすくなるため早食いにつながります。 早食いは血糖値の上昇や食べ過ぎの原因のため、このデメリットを解消するためにもごはんと牛皿の定食形式にしてみましょう。余分な調味料は皿に残りますし、ごはんにたれがしみ込まないため、早食い防止にもつながります。ごはんを小盛り(約160g)にすることや、野菜の追加も忘れずに意識してくださいね。 食べる楽しみは諦めなくていい 外食はごはんの量が多い、味付けが濃いことから、血糖値の乱れにつながるおそれがあります。しかし、組み合わせや食べ方を意識すれば、血糖値を気にすることなく楽しめます。ポイントは、ごはんの小盛り、野菜とたんぱく質をそろえることです。また、食べ方も非常に重要で、野菜やたんぱく質を先に食べたりよく噛んだりすることで、良い血糖値のコントロールにつながるのです。外食の特徴を知り、心から楽しみましょう。

  • 血糖値を抑える主食はどれ?おすすめの種類と食べ方を管理栄養士が解説

    糖尿病と食事の関係 糖尿病や重症化をおさえるためには、日々の食事が鍵を握ります。血糖値の変動を起こす一番の要因が食事だからです。特にお米やパン、麺などの主食には糖質が多く含まれているため、これらをいかに適切に食べていくかが大切です。 しかし、多くの方が何をどれくらい食べてよいのか悩んでいます。血糖値を上げにくい主食や、摂り方などを管理栄養士が解説します。 糖尿病の食事の基本 まずは糖尿病発症や重症化対策にはどのような点に気を付ければよいのか。食事の基本について解説します。 糖質の摂り過ぎに気をつける 血糖値を一番上げるのは糖質です。糖質はお菓子やジュースのほか、お米やパン、麺に多く含まれています。そのため、摂り過ぎによって血糖値の急上昇が起きます。 しかし、摂らなさ過ぎも実は問題です。体や脳を動かすエネルギー不足につながり、疲労やイライラを感じたり、筋肉の分解が起きて血糖値や体重のコントロールの悪化につながったりするおそれがあるためです。毎食摂るものだからこそ、「適量」を意識したいですね。 GI値の低いものを取り入れる GI値(グリセミック・インデックス)をご存知ですか?食品の糖質の吸収度合いの指標のことで、最高値を100とし、値が低いほど血糖値が上がりにくいとされています。主食でも玄米と白米ではGI値が異なります。GI値が低いものを積極的に摂ることも血糖値のよいコントロールにつながるでしょう。 バランスを意識する 前述にあるように主食を適量、低GI食品にしても食事のバランスが崩れていたら血糖値は上がりやすいです。例えばおにぎりだけ、パンだけの食事は血糖値の急上昇が起きやすいでしょう。主食だけでは糖質を代謝するビタミンやミネラルが足りないからです。 さらに、血糖値の上昇を緩やかにするとされる食物繊維も不足します。このように血糖値のコントロールには主食の質や量だけでなく、ほかの食材との組み合わせも大事なのです。 お米の選び方と食べ方のコツ 血糖値のコントロールのための食事の基本がわかりましたね。しかし、お米は本当に摂ってもよいのか、血糖値を逆に上げないのかなど、悩む方も多いでしょう。そこで、お米を摂っても食後高血糖を抑える方法を解説します。 米は血糖値をあげる? お米は血糖値を上げやすいイメージがありますよね。実は、お菓子よりも血糖値は上がりにくい種類です。さらに腹持ちもよいので、余剰な間食をとって血糖値を乱すのも抑えてくれます。お米が血糖値を上げやすいとされるのは、摂り過ぎや食事バランスの乱れ、食べ方などの影響が大きいのです。 おすすめの種類 お米のなかでも白米は、血糖値が上がりやすそうで避ける方も多いでしょう。確かにGI値は70以上で、高GI食品に位置づけられています。しかし、食べる量や食べ方に気を付ければ、血糖値の急上昇を抑えることはできますよ。より血糖値を抑えたい場合は、以下の種類がおすすめです。 ・玄米 ・もち麦 ・雑穀米 これらは精製度が低い穀類で、低~中GI食品に位置付けられています。血糖値の上昇を抑える食物繊維や、糖質の代謝に関わるビタミンB群やマグネシウムなどの栄養素が白米より多いためです。しかし、摂り過ぎると消化不良を起こす場合もあるため、単品ではなく白米と混ぜて使うのがおすすめです。 血糖値を上げない食べ方 GI値が低い種類を取り入れるほかに、量や食べ方も非常に大切です。個人差はありますが、1食あたり茶碗1杯(160~200g)を目安に摂ってみましょう。また、いきなりお米から食べるのではなく、たんぱく質や野菜から食べることや、よく噛んで食べることを意識してみてください。これらの食べ方で、血糖値の急上昇を抑えることもわかっています。 このように、お米を摂っても量や食べ方をおさえれば、よい血糖値のコントロールが期待できますよ。 パンや麺の選び方と食べ方のコツ お米は、量や食べ方を意識すれば血糖値のコントロールができることがわかりました。しかし、同じ主食の仲間であるパンや麺はどうでしょうか?パンと麺の特徴とおすすめの種類を紹介します。 パンや麺は糖尿病に良くない? パンや麺も、お米同様に血糖値を上げやすいイメージがあるでしょう。実際、食パンといった白いパンのGI値は高めですが、麺類は意外と中~低GIの種類が多いです。しかし、パンや麺は柔らかく、たくさん噛む必要がないので胃にすぐに流れ込み、食後高血糖が起きやすいとされています。 さらに腹持ちもよくないため空腹感を感じやすく、その後の間食が増えてしまうおそれも。そのため、食べ方やバランスをしっかり意識したいですね。 おすすめの種類 パンや麺が食べたいが、血糖値が気になる場合は以下の種類を意識的に取り入れてみてください。 ・食パン ・ロールパン ・全粒粉のパン ・そば ・パスタ 表1 各主食の一人前あたりの栄養価 種類一人前エネルギー(kcal)たんぱく質(g)脂質(g)炭水化物(g)食塩相当量(g) 食パン6枚切り1枚(60g)1495.32.527.80.7 ロールパン2個(60g)1856.15.429.20.7 そば(ゆで)1束(260g)29412.51.857.50.3 うどん(ゆで)1玉(230g)2186.00.949.70.7 中華麺(ゆで)1玉(230g)30611.31.467.20.5 パスタ(乾)1束(210g)31512.21.967.62.5 表2 GI値一覧表[愛佐2] GI値 食パン95 うどん(ゆで)62 そば(ゆで)55 中華麺(生)65 パスタ(乾)48 ※あくまで目安値です。実際の商品により値は異なります 菓子パン類は砂糖を多く使用していることから、血糖値の急上昇を引き起こしやすいです。食事として使うのは避け、シンプルな味付けのパンを選ぶようにしましょう。 さらに、ふすま粉やライ麦などの全粒粉穀類を含んだものであれば、より血糖値の上昇が抑えられますよ。また、そばやパスタは低GI食品に該当するため、麺類であればこの2種類がおすすめです。しかし、低GIだからといってパスタやそばばかり食べると、エネルギーの摂り過ぎにつながるおそれもあるため、取り入れる量や頻度には注意してくださいね。 パンや麺を食べる時の注意点 お米同様に、パンや麺はたんぱく質や食物繊維が不足しやすいです。たまごやサラダチキンを足したり、野菜をサラダやスープなどでしっかり取り入れてみたりしてください。またよく噛まずに食べられてしまう形態のため、意識的に噛むようにしましょう。 さらに、パンや麺には食塩が含まれています。血糖値のほかに血圧も気になる方は毎日食べるのは避けた方が安心です。 主食はどれが良いのか? 血糖値の良好なコントロールのためには、基本はお米を中心に食べるとよいでしょう。お米は噛み応えもあり腹持ちも良いため、間食防止にもつながります。また魚や納豆、豆腐などの糖尿病対策に役立つ食材との相性がよいのもおすすめの理由のひとつです。 さらに、お米の食塩相当量は0gのため、余分な塩分を摂らすに済みます。以上のことから、お米を中心にし、時折パンや麺料理を取り入れてみてくださいね。 お米を食べて良好な血糖コントロールを目指そう 血糖値の良好なコントロールを目指すにあたって、食事は欠かせません。特に米やパン、麺などの主食は糖質が多く含まれているため、血糖値に大きく関わります。しかし、それと同時に体と脳にも大事な栄養素でもあるため、適量を摂ることが重要です。そのほか、低GI食品を選んだり、たんぱく質や食物繊維などのバランスを整えたりすることも意識しましょう。 そんな主食ですが、基本はお米がおすすめです。低GI食品である玄米や五穀米などを活用するのも良いですね。パンや麺は時折取り入れる程度にしてくださいね。様々な食材と相性がよいお米を活用して、良い血糖値のコントロールを目指しましょう。

前の記事 コラム一覧へ戻る