
腎臓病でもおやつは食べられる?管理栄養士が教える選び方や注意点

腎臓病の方にとっておやつが必要な理由

おやつは単なる嗜好品ではなく、心と体の健康維持につながります。
食事制限によるストレスの軽減
腎臓病の食事制限は厳しく、食べたいものが食べられないという状況は大きなストレスとなります。おやつは、食事とは違った楽しみを味わえ、いつもの単調な食事からくるストレスを一時的に忘れさせてくれるもの。医師や管理栄養士と相談の上、病状に合わせたおやつを選ぶことで、心の負担を軽減し、治療を続けるモチベーションを保つことにつながります。
食事量不足によるエネルギー不足の補給
制限される食材が多いことから、食欲不振がある場合には、必要なエネルギーや栄養素が不足しがちです。特に高齢の患者さんは低栄養になったり、体重が減少したりするリスクが高まります。そういった方にとっておやつは、少量でも手軽にエネルギーを補給できるため、低栄養状態を防ぎ、体力の維持に役立てるお助けアイテムとなるのです。
精神的な満足感とQOLの向上
おやつは、単なる栄養補給ではありません。精神的な満足感をもたらし、生活の質の向上(QOL)に大きく役立ちます。好きなものを少量でも食べられるという喜びは、日々の生活にメリハリが生まれ、きゅうくつな食事制限の中でも前向きな気持ちを保つモチベーションとなるでしょう。また、家族や友人と一緒におやつを楽しむ時間は、コミュニケーションの機会にもなり、孤立感を防ぐ上でも重要です。
腎臓病のおやつの基本の考え方

おやつを選ぶ際も、食事療法の考え方をベースとします。ここでは、覚えておいてほしい基本の3点をご紹介します。
塩分・たんぱく質・カリウム・リンが控えめのおやつを選ぶ
腎臓病の食事療法では、塩分、たんぱく質、カリウム、リンの摂取量を制限することが基本となります。おやつを選ぶ際も同様で、これらの成分が多く含まれているおやつを選んでしまうと、普段の食事で制限していても、トータルでの摂取量が増えてしまい、腎臓に負担をかけてしまう可能性があります。
【食事療法中は控えたいおやつの例】
・塩分の多いおやつ:スナック菓子、珍味(するめ、さきいか)など
・たんぱく質の多いおやつ:豆菓子、魚肉ソーセージ、乳製品(ヨーグルト、チーズ)など
・カリウムの多いおやつ:ドライフルーツ、チョコレート、ナッツ類、いも類のおやつ(スイートポテト)など
・リンの多いおやつ:乳製品、いも類のおやつ、チョコレート、ナッツ類など
これらの成分が控えめなものを選ぶか、管理栄養士と相談して摂取量を調整しましょう。
食事を基本に+αでおやつを取り入れる
おやつは、あくまで通常の食事で不足しがちな栄養を補ったり、気分転換を図ったりするための「+α」と捉えましょう。おやつで必要な栄養を摂ろうとすると、かえって特定の成分を過剰摂取してしまう可能性があります。
おやつの目安としては、1日の必要エネルギーの約10%程度(100〜200kcal程度)に抑えるのが一般的です。市販品であれば、栄養成分表示を必ず確認し、手作りの場合は、使用する食材の成分を考慮して工夫することが大切です。
食べる量は決めておく
「少しだけ」「もう一口だけ」といった気持ちから、ついつい食べ過ぎてしまうのがおやつです。そこで、袋から直接食べるのではなく、まずはお皿に食べる分だけ出してから食べ始める、小袋に入ったおやつを選ぶ場合は1袋だけにする、などの工夫が有効です。残りはすぐに棚にしまうなど、目に入らない場所に片付けることで、食べ過ぎを防ぐことができます。事前に量を決める習慣をつけることで、無理なく食事療法を続けられるでしょう。
腎臓病の方におすすめのおやつ

ここでは、腎臓病の方におすすめのおやつとその栄養価をご紹介します。[1]ぜひ日々のおやつ選びの参考にしてください。
種類 | 1個当たりの重量(g) | エネルギー(kcal) | たんぱく質(g) | カリウム(mg) | リン(mg) | 塩分(g) |
飴 | 5(1粒) | 19 | 0 | 0.1 | 0 | 0 |
水ようかん | 80(1個) | 134 | 2.1 | 13.6 | 18.4 | 0.08 |
八つ橋 | 24(1個) | 66 | 0.9 | 8.4 | 10.1 | 0 |
くず餅 | 95(1個) | 88 | 0.1 | 1.0 | 2.9 | 0 |
みたらし団子 | 55(1本) | 107 | 1.8 | 32.5 | 28.6 | 0.33 |
せんべい(しょうゆ) | 15(1枚) | 55 | 1.0 | 19.5 | 18 | 0.2 |
リーフパイ | 21(1個) | 117 | 1.2 | 16.2 | 8.8 | 0.02 |
シャーベット | 100(1本) | 128 | 0.9 | 95 | 22 | 0 |
※栄養価はメーカーによって異なるため、パッケージをよくご確認の上、選ぶことをおすすめします。
飴
飴は、主に砂糖でできており、手軽にエネルギーを補給できます。たんぱく質やカリウム、リンなどの腎臓病で制限が必要な成分がほとんど含まれていないため、安心して食べられるおやつの一つです。ただし、糖分の摂りすぎには注意し、適量を心がけましょう。食欲がない時のエネルギー源としても役立ちます。
水ようかん
小豆にはカリウムが多く含まれますが、水ようかんは小豆を水で薄めているため、比較的カリウムが少なくなります。また、たんぱく質も控えめなので、安心して食べやすいでしょう。口当たりよいため、食欲がないときでも食べやすいおやつです。
生八つ橋
京都銘菓の生八つ橋も、カリウムやリンの含有量が少なく、安心して食べられます。特に、つぶあんよりもこしあんタイプがおすすめです。もちもちとした食感と上品な甘さが特徴で、少量でも満足感を得やすいでしょう。
わらび餅・くず餅
わらび餅やくず餅は、たんぱく質、カリウム、リンのいずれも少ないのが魅力です。ただし、添えられている黒蜜はカリウムが多く含まれるため、かけすぎには注意が必要です。きな粉もカリウムやリンを含むため、少量にするか、なしで食べるのが良いでしょう。
みたらし団子
お団子の主成分である米粉は、カリウムもリンも比較的少ないため、安心して食べられます。1本でも満足感があり、食べ応えもあるので、小腹を満たすのに最適です。ただし、タレの塩分量には注意し、食べ過ぎないようにしましょう。
せんべい
せんべいは、塩分が多めなので、たくさん食べることはおすすめできません。しかし、小袋に入ったものを選び、1袋だけにするなど量を決めて食べるのであれば、許容範囲内です。また、塩分の少ない南部せんべいを選んだり、減塩タイプのせんべいを選ぶと、より安心して食べられます。
リーフパイ
リーフパイのようなパイ系のお菓子も、食べ過ぎなければ比較的カリウムやリンが少ない傾向にあります。中でも小袋に入ったものなら、量をコントロールしやすくおすすめです。
無果汁のシャーベット
暑い日や食欲がない時にも食べやすいシャーベットですが、果汁を使ったものはカリウムが多くなりやすいので注意が必要です。そのため、サイダー味やレモン味など、果汁をほとんど使用していないタイプを選ぶのがおすすめです。
腎臓病用おやつ
市販の腎臓病用おやつは、栄養成分が調整されているため、より安心して食べられます。「アガロリー」や「エネルギーゼリー」、「エネプリン」のようなゼリー状のものから、たんぱく質調整ビスケット、カステラ、せんべいなど、さまざまな種類があります。日々の食事管理をされている中で、より安心しておやつを選びたい方は、これらの商品を活用するのもおすすめです。
腎臓病のおやつに関する注意点

おやつは腎臓病の食事療法を続ける上で大切な役割を果たしますが、いくつか注意すべき点があります。
水分制限がある方はおやつの種類に注意
腎臓病のステージや尿の出方によっては、医師から水分制限の指示が出ることがあります。このような場合、知らず知らずのうちに水分を摂りすぎてしまわないよう、おやつの種類にも注意が必要です。
腎臓病のステージや尿の出方によっては、医師から水分制限の指示が出ることがあります。このような場例えば、ゼリーやプリン、アイスクリームなどは、見た目以上に多くの水分を含んでいます。喉越しの良いこれらのおやつは、ついつい食べ過ぎてしまいがちですが、水分制限がある場合は摂取量に気をつけましょう。医師や管理栄養士と相談し、水分量を確認しながら、適切なおやつを選ぶことが大切です。
必ずかかりつけ医・管理栄養士の指示に従う
腎臓病の進行度合いや合併症の有無など、患者さん一人ひとりの状態は大きく異なります。そのため、必要な食事制限の内容も人それぞれです。インターネットや本で得た情報だけで、「これは大丈夫だろう」「これはやめておこう」と自己判断してしまうのは大変危険です。
おやつを選ぶ際も、必ずかかりつけ医や管理栄養士の指示に従ってください。何を食べても良いのか、どのくらいの量なら許容されるのかを具体的に確認し、適切な指導を受けることが大切です。
おやつを取り入れて上手に腎臓病と付き合おう
おやつは日々のストレスを和らげ、必要なエネルギーを補給できるため、腎臓病患者さんにとって大切な役割を担っています。おやつを選ぶ際の基本は、食塩、たんぱく質、カリウム、リンが少ないものを選ぶことです。これらのポイントを押さえ、食事療法を無理なく続けながら、おやつを楽しみましょう。