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脳梗塞は誰にでも起こるって本当?原因や予防法を解説

「自分はまだまだ元気だから大丈夫」と思っていても、ある日突然、言葉が出なくなったり、手足が動かなくなったりする。そんな恐ろしい病気が脳梗塞です。決して他人事ではなく、誰の身にも起こる可能性があります。しかし、その原因を知り、生活習慣を見直すことで、リスクを大きく減らすことができるのです。

この記事では、脳梗塞の基本的な知識から、今日から始められる予防法まで、分かりやすく解説していきます。

目次


脳梗塞の原因を知る


まずは、そもそも脳梗塞とはどんな病気なのか、その原因から見ていきましょう。

脳梗塞とは

ひと言でいうと、脳の血管が詰まってしまう病気です。血管が詰まると、その先にある脳の細胞に酸素や栄養が届かなくなってしまいます。そうなると、脳の細胞はダメージを受け、壊れてしまうこともあります。

ダメージを受けた脳の場所によって、手足の麻痺やしびれ、言葉の障害(ろれつが回らない、言葉が出てこない)、めまいなど、さまざまな症状が現れます。一度壊れてしまった脳の細胞は、残念ながら元に戻ることは難しく、後遺症が残ってしまうことも少なくありません。

主な原因

では、なぜ脳の血管が詰まってしまうのでしょうか。その最大の原因は「動脈硬化」です。動脈硬化とは、血管が硬く、もろくなってしまう状態のこと。しなやかさを失った血管の内側には、傷がつきやすくなったり、コレステロールなどがたまって血管が狭くなったりします。

動脈硬化を引き起こす、主な危険因子がこちらです。[1]

高血圧常に血管に高い圧力がかかっている状態。血管を傷つけ、動脈硬化を進めます。
脂質異常症血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が多すぎる状態。血液がドロドロになり、血管の壁に脂質がたまりやすくなります。
糖尿病血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行します。
肥満高血圧、脂質異常症、糖尿病といった、複数の危険因子を抱えやすくなります。
心疾患
(特に心房細動)
心臓が不規則に拍動することで心臓の中に血の塊(血栓)ができやすくなり、それが血流に乗って脳まで飛んでいき、血管を詰まらせることがあります。

これらの危険因子は、一つひとつは軽くても、複数重なることで脳梗塞のリスクを飛躍的に高めてしまいます。

血液検査で脳梗塞のリスクが分かる?

年に一度の健康診断、結果の数値を何となく眺めているだけになっていませんか?実は、血液検査の項目には、脳梗塞のリスクを知るための重要な手がかりが隠されています。

コレステロール
(LDL/悪玉、HDL/善玉)
悪玉(LDL)コレステロールは、増えすぎると血管の壁にたまって動脈硬化の原因になります。逆に善玉(HDL)コレステロールは、余分なコレステロールを回収してくれる働きがあります。
中性脂肪体のエネルギー源ですが、多すぎると悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化を進めます。
HbA1c
(ヘモグロビンエーワンシー)
過去1~2ヶ月の血糖値の平均を示す数値です。これが高いと、糖尿病のリスクや、血管が傷つきやすい状態にあることが分かります。
尿酸値高いと痛風の原因になることで知られていますが、実は血管の壁を傷つけ、動脈硬化を進める要因にもなります。

これらの数値が基準値を超えている場合、それは「あなたの血管が悲鳴を上げているサイン」かもしれません。放置せずに、生活習慣を見直すきっかけにしましょう。

もし、ご自身の動脈硬化や心臓の状態について、より詳しく知りたい場合は、人間ドックなどで受けられるオプション検査を検討するのも良いでしょう。心臓の負担の度合いや、血管の微細な炎症などを調べる専門的な項目を追加で検査することができます。持病があるなど心配な方は、検討してみてはいかがでしょうか。

脳梗塞を予防するための3つのポイント

脳梗塞のリスクを減らすためには、薬による治療も非常に重要ですが、それと合わせて毎日の生活習慣を改善することが何よりも大切です。ここでは、今日から始められる3つのポイントをご紹介します。

1.食事を見直す


毎日の食事は、私たちの体を作る基本です。食べ物が変われば、血液や血管の状態も変わってきます。


・塩分を控える工夫
塩分の摂りすぎは、血圧を上げる大きな原因です。まずは、普段の食事から少しだけ塩分を減らす工夫をしてみましょう。お味噌汁は具沢山にして汁を減らす、だしや香辛料(こしょう、しょうが、ハーブなど)の風味を活かして薄味でも美味しく食べる、醤油やソースは「かける」のではなく「つけて」食べる、といった小さな工夫が効果的です。


・脂質を減らす工夫
脂質の摂りすぎは、血管にとって大きな負担です。こってりした揚げ物や肉の脂身は美味しいものですが、悪玉コレステロールを増やす原因になりがち。肉を食べるなら赤身に変えたり、ベーコンなどの加工品を食べる頻度を減らしたりと、少しメリハリをつけてみましょう。調理法も、いつもの「揚げる」を「焼く」や「蒸す」に変えるだけで、摂る油の量をぐっと減らせます。


・血液をサラサラにする食材
サバやイワシ、サンマなどの青魚に多く含まれるDHAやEPAという油には、血液を固まりにくくし、コレステロールや中性脂肪を減らす働きがあると言われています。手軽なサバ缶などを活用して、積極的に食事に取り入れるのがおすすめです。[2]

2.運動を始める


適度な運動は、血圧や血糖値を下げ、善玉コレステロールを増やすなど、たくさんの良い効果があります。


・ウォーキングなどできることから
運動と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、きつい筋トレやランニングをする必要はありません。まずは、ウォーキングから始めてみましょう。1日30分程度を目安に、おしゃべりしながらでも続けられるくらいのペースで十分。エレベーターを階段に変える、一駅手前で降りて歩くなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やすことも大切です。


・一時的ではなく、続けることが大切
何よりも重要なのは、続けることです。無理な目標を立てて三日坊主になるよりも、楽しみながら続けられることを見つけるのが長続きのコツです。ご夫婦で、あるいはお友達と、会話を楽しみながら歩く時間を作るのも良いでしょう。

3.たばこやアルコールを控える


たばことアルコールの習慣も、血管の健康に大きく関わっています。


・たばこ
たばこは血管を傷つけ、動脈硬化を強力に進める最大の原因の一つです。まさに「百害あって一利なし」。ご自身の健康のため、そして大切なご家族のためにも、禁煙を目指しましょう。


・アルコール
適量のアルコールは血行を良くするとも言われますが、飲み過ぎは高血圧や中性脂肪の増加につながり、脳梗塞のリスクを高めます。飲む場合は、ビールならロング缶1本、日本酒なら1合程度を目安にし、週に2日程度は肝臓を休ませる「休肝日」を設けるようにしましょう。

脳梗塞になってしまった場合の食事のポイント


一度脳梗塞を経験された方が、最も気をつけなければならないのが「再発」です。脳卒中を一度発症すると、5年以内に約3人に1人(約35%)が再発するとされています。[3]
この高い再発率を少しでも下げるために、薬での治療と並行して、食事管理がとても大切です。

再発予防のための食事

一度脳梗塞を起こしたということは、血管が傷つきやすい状態にあるということ。再発を防ぐには、これまで以上に徹底した食事管理が欠かせません。基本は、予防の食事と同じく「塩分」と「脂質」を控えた食事が中心となります。ただし、ご自身の判断だけでなく、必ず医師や管理栄養士の指導のもとで、適切な食事療法を進めていくことが大切です。

嚥下(飲み込み)に配慮した食事

後遺症で、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる嚥下(えんげ)障害が残ることがあります。飲み込む力が弱まっていると、食べ物が誤って気管に入ってしまい、肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こす危険があります。

ご本人に合った食事の固さや、とろみの調整など、専門的な配慮が必要になるため、知識のない方が判断するのは非常に危険です。必ず、言語聴覚士や管理栄養士といった専門家に相談し、安全な食事の進め方について指導を受けてください。

脳梗塞予防には日々の生活習慣の見直しが大切

脳梗塞は、特別な人がなる病気ではありません。長年の生活習慣の積み重ねが、血管の状態となって現れ、発症につながります。健康診断の結果を見て見ぬふりをせず、自分の体の状態をきちんと把握すること。そして、食事、運動、禁煙など、今日からできる小さな一歩を始めることが脳梗塞予防には必要です。

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参考文献

[1]厚生労働省|健康日本21アクション支援システム Webサイト
[2]厚生労働省eJIM | オメガ3系脂肪酸[サプリメント・ビタミン・ミネラル - 医療者]
[3]厚生労働省|脳卒中の回復期・維持期の診療提供体制の考え方(案)

この記事を書いた人

端場愛
管理栄養士
学生寮や老人保健施設で実務経験を積んだのち、フリーランスの管理栄養士に。食べ物と体の関係を分かりやすく伝え、少しでも多くの人に健康になってもらうことを目標に、ライターとして活動中。

監修者紹介

木村眞樹子医師
東京女子医科大学医学部卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。 妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。 医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

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